[携帯モード] [URL送信]

 
あかね

障気に侵された地を食んだ。
それでようやく生き長らえた。
他に食うものなんかなかった。
空からは毒の雨が降った。
無様な泥だらけの僕を、
好きだと言って君が笑った。
そうだ、君のためだ、行かなくちゃ。
死んだ身体を引き摺らなくちゃ。
殺してくれと君の涙は、
泥水みたいな色をしてた。
ごめんね、それはできないよ。
だって僕は君がいなくちゃ駄目だ。
障気に侵された地を食んだ。
君もそうやって生きていた。
他に選べる道もなかった。
ただ、死にたくなかったから。
空からは毒の雨が降って、
身体は痛むがまだ動ける。
這って、進んで、咳き込んだ。
僕もまた障気を撒き散らしてた。
君は傷ついた顔をして、
それでも逃げ出す力もなくて。
結局なにもかも諦めて、
進み続けようと前を見た。
殺してくれと泣いた僕に、
君は構わないよとまた笑った。
だけどいつだっていいでしょうと、
今は疲れたから、また今度って。
進まなきゃ。
こんな意地っ張りでごめんね。
でも君も僕もお互い様だ。
見えない未来を探して、探して、
命を削って、それでもまだ、
見つかることはない。
進まなきゃ。
障気に侵された地を食んだ。
空からは毒の雨が降った。
涙は泥水みたいだった。
排出せよ、もっともっと。
それでようやっと歩き出せる。
理由はなんだってよかった。
君はそれに利用されただけ。
僕も君に利用されただけ。
あの約束が実る日は、
まだまだ来ないだろうけど。
この雨が止む日だって、
僕らが生きてるうちには来ないだろうけど。
進まなきゃ。
まだ動ける。
君のためだ。


▲  ▼